2023年に観たお笑いライブ

昨年は多忙で、現地はおろか、配信でお笑いライブを観ることもめっきり減った。関西に戻ってきたことだし、今年はちょっとくらいは劇場に行きたいが…… 1月1日 マヂカルラブリーno寄席 マヂカルラブリー/ダイヤモンド、ランジャタイ、ザ・ギース、脳みそ夫、…

M-1グランプリ2023所感

今年は腰を据えてガッツリとした分析を書く暇がないため、タイトルを「所感」としている。 漫才を批評する際に、何となく前提とされる二項対立がある。それは「大喜利漫才-システム漫才」である。大喜利漫才というのはボケの「強さ」で勝負する漫才であり、…

俺ならできるし、ここまでやってきてる

今年は激動の一年であった。同じ年の初めには帯広の銀世界にいて、競馬場の前のでっかい病院のICUに正月から出勤していたかと思うと信じられない。隔世の感がある。私は今、奈良の地にいて、呼吸器内科医をやっている。ひたすら呼吸器のことを考えていればい…

2023年7月〜12月に読んだ本

今年の秋口から息を吹き返してきて、わりと頑張って本を読んだ。 7月 2316 長谷川直樹 編『症例で学ぶ肺非結核性抗酸菌症』(医学書院、2020) 8月 2317 『現代思想 第51巻3号 ブルーノ・ラトゥール』(青土社、2023) 2318 奥野克巳 編『たぐい vol.3 ティ…

『ブルーノ・ラトゥールの取説』レジュメ、および呼吸器内科医的ラトゥール論

(0) はじめに (1) 非還元の原理 技術決定論 社会構成主義 相互排他的対立を超えて (2) カロンによるアクターネットワーク論 「社会的なもの」についての問題 ANTとは何か 「アクターを追い/倣え」 (3) ラトゥールによるアクターネットワーク論 仲介と媒介 …

またつくりたいごはん(その1)

毎日のごはんはInstagram*1にアップロードすることにして、またつくりたいごはんの写真が50枚貯まったらブログを更新することにしました。2年半でこの枚数なので、気長にやっていければと思っています。 21/5/9 豚のしょうが焼き 21/5/23 ハンバーグ 21/6/3 …

複数の実在としての間質性肺炎 -ストラザーンとモルを補助線にすることの可能性

0. はじめに 1. 気管支のなかで迷子になる 2. カントールの塵、あるいは人類学におけるスケールの問題 3. 間質性肺炎とは何か 4. フラクタル構造としての蜂巣肺 5. ポスト多元主義、部分的つながり 6. 「一よりも多いが、多よりは少ない」 -「複数の存在」と…

青松輝『4』の感想(あるいは、思い出話)

せっかく記事を書くので、対外的にも文脈がわかるように少しだけ思い出話を書く。青松とはじめに出会ったのは私が中学2年生のときに彼が1年生としてバスケ部に入ってきたときのことだった。しかし青松はすぐに辞めたので特にそのときの思い出は残っておらず…

身体・享受・規律

濡れた草の匂いを嗅いだ。ある中華料理屋で炒飯を食べ、外に出たときだった。その刹那、この2年間忘れていた匂いだと感じた。北海道は関西と比べて湿気が少ないのはもちろんのこと、夏の夕立ちを経験することもほとんどなかったのだ。身体的な位相で刻印され…

2023年1月〜6月に読んだ本

言い訳と言われればそれまでですが、2023年の前半は環境の変化が大きかったのもあり、お世辞にもたくさん本を読めたとは言い難かったです。また、医学の勉強の仕方も変わりました。初期研修医時代であればその科をローテするうえで道標となる本を数冊読む、…

現在とは過去の堆積である

深夜2時10分、病棟からの着信音で目を覚ます。遅い時間だが、私にはその電話の理由は出る前からわかっていた。案の定、電話越しに看護師は、「××さんの呼吸と脈拍が止まりました」と危篤状態になっていた私の名前の患者を言った。「向かいます」と短く返事を…

M-1における「競技漫才」と、THE SECONDにおけるまだ名前のついていない何か

2023年5月20日に行われたTHE SECONDは、6分という制限時間と、観客審査、そして16年以上の芸歴という3つの要素でM-1とここまで違う大会になるのだという驚きがあった。4分の競技漫才では行うのが難しいことと、減点対象になったであろうことに注目して比較し…

Zoomgalsの「自己矛盾」とサイボーグ・フェミニズム

は? ギャルの鉄則? なんてあるようで無いし好きにやりや それは衝撃だった。私には、漠然と感じていたZoomgalsの「自己矛盾」が、大門弥生のその一言で一挙に顕わになったように思えて、動揺した。 1. Zoomgalsとは何か ひたすら「自分は最強」みたいなこと…

話し足りないことがある

2021年3月末、大きなスーツケースを引っ張りながらタクシーに乗り込み、「帯広協会病院まで」と言ったとき、運転手は「協会病院ですね」と返した。そのとき私は、ああ、彼にとっては「帯広」ということは所与の前提だからわざわざ頭につける必要がないのだと…

帯広ランチ 全レビュー

全レビューといっても帯広市内の店すべてではなく、北は国道38号線、東は札内川、西は大通、南はJR根室本線に囲われた以下の区域の「全レビュー」となっています。これは私が帯広に住んでいる間に全制覇しようと目標にしていた範囲で、1年9ヶ月ほどかけて行…

M-1グランプリ2022分析

序 カベポスター 真空ジェシカ オズワルド ロングコートダディ さや香 男性ブランコ ダイヤモンド ヨネダ2000 キュウ ウエストランド 結 序 客観的な分析を始める前に、私情を書いておく。私は2012年のTHE MANZAIの認定漫才師になったことでウエストランドを…

2022年に観たお笑いライブ

12月29日 黒帯会議 年末SP② 12月21日 門野という男 12月17日 黒帯会議 年末SP① 12月2日 マイナビ presents ほら!ここが父ちゃんちの踊り場 11月20日 赤もみじの道程 11月20日 千鳥の大漫才2022 11月7日 トークライブ黒帯と中山さん 9月23日 9月9日 シン・り…

2022年7月〜12月に読んだ本

7月 2245 四元秀毅 編『結核の知識』(医学書院、2019) 2246 まんしゅうきつこ『アル中ワンダーランド』 2247 佐藤智寛 『Dr.とらますくの採血&静脈ルート 確保手技マスターノート 』(ナツメ社、2017) 2248 アネマリー・モル『多としての身体』(水声社、…

外科医と雪かき

10月半ばから年明けの第1週まで、同じ市内ではあるが別の大きな病院で研修をしている。自宅からはやや離れていて、寒いというよりは痛いという感情に襲われながら、12月頭までは自転車を15分漕いで氷点下の世界を走っていた。しかしさすがに路面が凍結し始め…

人間の身体には凹凸がある。

循環器ローテ中、毎朝のカンファで話を聞きながら私は、自分の左手の甲から前腕にかけてくっきりと浮き出た自分の静脈を触っている。7階の狭い小部屋の窓はちょうど朝日と私の真ん中にあって、その光は青緑の管に陰影をつける。あまりはっきりとはみえないが…

2022年1月〜6月に読んだ本

1月 2201 窪田忠夫『ブラッシュアップ急性腹症 第2版』(中外医学社、2018) 2202 S.H.McDnielほか『家族志向のプライマリ・ケア』(丸善出版、2012) 2203 増井信高『結局現場でどうする? Dr.増井の神経救急セミナー』(日本医事新報社、2020) 2204 小川公…

2021年おもしろかった番組ベスト25

あとあとこういうのが残っていると楽しいかなと思い、今年から始めてみました。ベスト10まではほとんど揺るぎなくすぐに決まりました。 25位 にちようチャップリン 〜2週ぶち抜き! 賞レース惜しかった芸人大集合SP〜(3月6日放送) 「(一見)おかしい人…

みんな元気。

12月は外科ローテで朝が早かった。5時半に起床し、6時過ぎには家を出ると外はまだほの暗くて、それでいて高い建物がないのでずっと向こうのほうで紅がさしているのがみえる。雪で白んだ世界も相まって、なんだか日本にいる気がしなかった。それを帯広出身の…

2021年に観たお笑いライブ

2021年(配信ライブ) 12月27日 黒帯会議 12月12日 真面目な勇者ああああ~ゲーム番組なのでちゃんとゲーム企画をやりましょう~ 12月3日 M-1グランプリ2021 準決勝 11月30日 黒帯会議 11月22日 空気階段の大踊り場 11月20日 千鳥が1時間新ネタだけをするLIV…

2021年7月〜12月に読んだ本

7月 21044 原田マハ『ロマンシエ』(小学館、2015) 自らの生物学的性と性自認の不一致という問題が、「女子力」「乙女心」のような少女漫画的なアイコンによって軽薄に表現されていることに違和感を覚えた。一方で、それを「軽薄」と思うこと自体が、トラン…

M-1グランプリ2021批評

「感想」ではなく「批評」をタイトルにしたのは、批評から逃げるな、という自戒からです。以下、敬称略で失礼します。 敗者復活戦 5. ハライチ 自分は『ハライチのターン』リスナーで紛れもなく彼らのファンなのだが、以前『ゴッドタン』の一企画において、…

頭虫は汚いし目も当てられない

休日、一日中本を読んでいたら我慢できなくなって、銀杏BOYZを聴きながらチャリで走り出した。24歳の夏である。23歳から1つ歳をとって、もう夏休みは来ない。 もともと、川というものが好きだ。だから近くの川まで走った。夕暮れに景色がよく映えていた。私…

2021年1月〜6月に読んだ本

働き始めたら冊数は減るかなと思っていたのですが、何とかペースを大幅に落とすことなく本を読めました。研修医としての最低限は担保するよう、4月からは「医学のお勉強の本とそれ以外の本を交互に読む」というルールを自分に課しています。 1月 21001 山下…

業績集

1. 学術論文(査読有り) 外山尚吾,青木杏奈,藤崎和彦,錦織宏.「医学とは何か」を問う教育の実態調査:中川米造の医学概論の観点から.医学教育.2020;51(4):379-388. https://www.jstage.jst.go.jp/article/mededjapan/51/4/51_379/_pdf/-char/ja Toya…

飯田淳子・錦織宏 編 『医師・医学生のための人類学・社会学』(ナカニシヤ出版、2021)

「あの人、せいほだから」 それは、医療現場でしばしば聞く言葉である。想像に難くないように「せいほ」とは「生活保護(受給者)」のことであり、しばしばその隠語には差別的なニュアンスが含まれている。幾度となくトラブルを巻き起こす患者が「せいほ」だ…