備忘録

オートエスノグラフィーとは何か

「エスノグラフィーとは何か」について知りたい方は、以下の記事をどうぞ。 satzdachs.hatenablog.com satzdachs.hatenablog.com 1. オートエスノグラフィー、その奇妙さ 2. オートエスノグラフィーの定義 3. Auto-ethno-graphyを3つの要素から考える ① 方法…

エスノグラフィーの歴史

エスノグラフィーのごく基本的なことだけを知りたい方はこちらをどうぞ。 satzdachs.hatenablog.com 1. 「異文化記述」の歴史 18世紀以前:人は、異文化を記述してきた。 19世紀① ベランダの人類学者veranda anthropologists 19世紀② 安楽椅子の人類学者 arm…

エスノグラフィーとは何か

本稿の目的は、エスノグラフィーという概念について(正確さはいったん置いておいて)ザクッとしたイメージをまず掴んでみることです。 1. 総論 2. 調査方法論としてのエスノグラフィーの基本:参与観察 3. フィールドはどこにあるのか 4. 補足:エスノグラ…

もうすぐ僕は学生ではなくなるし、青春は終わるし、いつか死ぬ。

ああ なんとなく僕たちは大人になるんだああ やだな やだななんとなく いやな感じだ―銀杏BOYZ “なんとなく僕たちは大人になるんだ” これから僕が書くのは、ほんとうに当たり前の話ばかりですが、ここ最近で現実の手触りが大きく変わったことで、その感触をど…

受験戦争と新自由主義

本稿では、いわゆる受験戦争を勝ち抜いてきた高学歴の学生と新自由主義の相性がなぜ良いのかをまず論じ、医学部においてそれがどのように表出しているのかに目を向けたあと、教育において何をすべきかについて考えてみたいと思います。 1. 上野千鶴子の東大…

嫉妬の理由

私は今、嫉妬している。それも、一度も会ったことすらない人に。 *** その感情は、まず苛立ちとして現れた。Twitterでたまたまその人のアカウントを見つけ、フォローをして少し経ったときのこと。その人がnoteに書いた文章と、それを称賛するツイートがRT…

『出来損ないの小説家』書評

久しぶりに短編小説『出来損ないの小説家』を読み直し、書評を書こうと思い立ち筆をとった。ネタバレ有りですのでまだ読んでいない方はご注意を。 荒井という男は、自分を見る冷ややかな目線を携えている一方で、「世界を変えたいから小説を書くんだ」と(本…

断片たち ー怒りについて

ひとりで飲むときはいつも同じバーに行く。この前は近くの小料理屋の料理人と隣り合わせになった。「昔ペーペーやった頃、先輩がお客さんに『捌くの上手いですね』って言われたときに『こんなん誰でもできますから』って答えてるの見て、それはちゃうやろっ…

雑記

・私と池尻達紀さんらで書いた論文を、奈良県立医大の地域医療講座の准教授の先生のブログで紹介してもらっているのを見つけました。この感じだと、奈良医で実際に行われている授業の一資料として使われている……? 論文としてこの世に出した意味を感じます。…

「変人」な京大生――「役割距離」から考える

「京大変人講座」というのがある。 www.gaia.h.kyoto-u.ac.jp HPを見ると「京大では『変人』はホメ言葉です」という文面がサブタイトルとして掲げられているのだが、要は、京大の「変人性」こそがイノベーションの源であるとして、「変人」たる京大の教員や…

初めての入院体験記

22歳男性【主訴】右胸部痛、呼吸困難感、咳嗽【現病歴】今朝起床時は無症状。大学で実習中、10時頃から突然咳嗽が出現。徐々に右胸部痛、呼吸困難感を伴い始める。12時半頃当院救急外来にウォークインで受診。【胸部Xp所見】肺虚脱度: 中程度【プロブレムリ…

医学教育学会大会がつまらなかった

煽情的なタイトルをつけたあとに大慌てで、医学教育学会大会全体がというわけではなくて、あくまで私がいた部屋のセッションが、という意味だということを付け加えておく。 7/26(金)・7/27(土)と京都府立京都学・歴彩館/稲盛記念会館で第51回日本医学教育学…

すでに「よそ者」ではない

この3連休で、「野田村 第1回 ごちゃまぜワークショップ」に参加していた。2泊3日で村中をフィールドワークをして、最終日に学生(医学、看護、歯学、社会福祉)が『村を良くするためのプラン』を発表するという企画で、過去に福島県飯舘村で行われたものに3回…

「わかる」がわからない

哲学者になる気は毛頭ないのだが、何を論じるにも基礎体力として必要になるし、何より物事を語る語彙を豊富にしてくれるので、恥ずかしながら、ちょびちょびと、独学で、哲学の勉強を続けている。例えば、今はカントについて大学に入りたての頃よりわかった…

中動態セミナー覚え書き

中動態についての國分功一郎と斎藤環のセミナーに参加しました。以下、覚え書きです。 https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1180105.html ・もともと私は、孤独死問題において頻回に問題になる「自由意志」について、それは思うほどsolidなものでは…

医師という、得体の知れない何か

「一部の人文社会科学研究者は『医師』という大きな主語で語り過ぎではないか?」と前から思っている(と言うとき私も、『人文社会科学研究者』という大きな主語で語っていることは自覚している)。例えば「医師は『合理的な専門家 vs 非合理な素人』の枠組…

休日の過ごし方

今日は大学の創立記念日で実習が休みで、Nと出町座で『愛がなんだ』という映画を観た。煮え切らなさを煮詰めたような作品だった。そのあとは鴨川デルタに座りこみ、缶ジュースを飲みながら覇気のない会話をした。犬に引っ張られるようにして飛び石を渡る女の…