令和1年5月1日 あとがき

だから、こういうことについて肝心なことは、いつでも自分が本当に感じたことから出発して、その意味を考えていくことだと思う。ーー『君たちはどう生きるか吉野源三郎

 コペル君の叔父さんがこう言っていたように、全31回、自分の経験を出発点として丁寧に言語化していくことを目指したつもりです。言語化して初めて、あるいは、言語化することそれ自体に導かれるようにして、あ、俺こんなこと考えてたんだ、と気が付くことの多い1か月間でした。とにかく書いて書いて書きまくっていたので、思考の回転数がいつもの何十倍にもなった状態で毎日を過ごしていて、正直かなり摩耗もしました。一方で、伝えたいことや表現したいことに応じて文体を(常体か敬体かというだけでなく)意識的に使い分けるというのは自分にとって新しい試みで、楽しくもありました。
 結局、31日間で述べ75968文字書きました。始めたときには全然そんなつもりはなかったのですが、奇しくも、平成最後の1か月が人生で最も文章を書いた1か月ということになりそうです。

 全31回は今の私に考えられる限界であると同時に、私の全てです。
 ここに書いたものは「すでに考えたこと」として平成に置き去りにするつもりです。言ってみれば脱皮したあとの抜け殻のようなものです。
 「自分に何が書けるのか」を自己に問い続けることは、「自分に何が書けないのか」を自覚していく過程でもありました。「書けなかった」ところを「書ける」ようにするために、令和元年から、また一歩ずつ頑張っていきたいと思います。

 最後になってしまいましたが、毎日読んでいただいた方、たまに読んでいただいた方、有益なコメントをつけてくれた方、そしてついでに果てしない議論にいつも付き合ってくれるくれるNにも感謝を述べて、本稿の締めくくりとさせていただきます。

757文字
(計76725文字)