2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧

高齢者に使う幼児言葉——Elderspeakについて

2020年x月x日 とある診療所にて 17時頃、目が赤くなったということを主訴にやってきたおばあちゃんがいた。診療室が空いておらず、処置室の広いペースにおばあちゃんが通されて、診察が始まった。 最初xx先生が通常の声量で話しかけても、おばあちゃんは「え…

民主主義における「熟議」と「闘技」、そして左派ポピュリズム

0. はじめに 1. 熟議民主主義(deliberative democracy) 2. 闘技民主主義(agonistic democracy) 3. ポスト・デモクラシー 4. 左派ポピュリズム 0. はじめに ILDにおけるMDDへの関心*1から、「話し合って何かが決まること」について考えている。その何かの…

間質性肺疾患の存在論③——診断するという営為について

0. はじめに 1. MDDの歴史 2. MDDの問題(1) 観察者間のコンセンサスの低さ 2. MDDの問題(2) 放射線的・組織病理学的パターンは重複する 3. 今後の展開について——なぜ診断するか? 0. はじめに 本章では、2023年に出版されたMDDに関するレビュー論文*1をもと…

間質性肺疾患の存在論②——フラクタル構造とスケールの問題

0. はじめに 1. 間質とは何か 2. 病理組織学的蜂巣肺と放射線診断的蜂巣肺 3. カントールの塵、あるいは人類学におけるスケールについて 4. びまん性肺疾患におけるサンプリング問題 5. おわりに 0. はじめに 前章では、疾患を基礎付けるものとして「病理の…

間質性肺疾患の存在論①——「病理の神託」が絶対ではない

0. はじめに 1. 18世紀における植物分類学——表面の観察、視覚の特権 2. 臨床医学的まなざし——病理が疾患を基礎づける 3. 肺癌——病理組織像による神託 4. 遡行的な確認としての病理、共時的な確認としての病理 5. ILD診断における「MDD」とは何か 6. おわりに…

グレーバー+ヴェングロウ『万物の黎明』第5章までのメモ書き

総じて、知ってはいたけど例外として見過ごしてきた(真のスコットランド人論法)事例を中心に、これまで暗黙に前提としていたことを転覆しようとする試みであり、その大胆さとは裏腹な丁寧な論証が魅力的な一冊である。扱うテーマは広範ではあるが、いくつ…