みんな元気。

 12月は外科ローテで朝が早かった。5時半に起床し、6時過ぎには家を出ると外はまだほの暗くて、それでいて高い建物がないのでずっと向こうのほうで紅がさしているのがみえる。雪で白んだ世界も相まって、なんだか日本にいる気がしなかった。それを帯広出身の同期に伝えると、ここは日本だと怒られた。もっともである。

 マジな話、帯広に来てよくなかったと思うことがひとつもない。職場の学習環境、同期含めた人間関係、初めてのひとり暮らし、美味しい食べ物、そのほかすべての素敵な出会いに満足している。もちろん医師という職業そのものにも。
 さまざまな局面で運に恵まれていることを感じると同時に、今の生活を支えている運というものの脆さを思う。直感を信じて縁もゆかりもない土地までやってきたが、振り返ってみるとけっこうな博打だった気がする。こうやってあとになって初めて気付くのが私の計画性の無さだ。

 この文章の読者が、日々の生活のなかで、私という存在を思い出してくれる瞬間というのはどのくらいあるだろうか。そう問いかけたあなたのことを私は思い出せていないかもしれない。でも思い出す出さないに関わらず、私はこれまですべての関わってきた人たちで構成されているのは事実で、図々しいかもしれないが、その誰もが幸せであることを願いたい気持ちがある。
 私は来年も、日本じゃないみたい日本の地から、みんな元気?と問いかけるのではなく、みんな元気。と祈りをおくろうと思う。他の人生もあり得たかもしれないが、今の人生はそれなりによいものだ。だから万事大丈夫だと思う。

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