頭虫は汚いし目も当てられない

 休日、一日中本を読んでいたら我慢できなくなって、銀杏BOYZを聴きながらチャリで走り出した。24歳の夏である。23歳から1つ歳をとって、もう夏休みは来ない。

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 もともと、川というものが好きだ。だから近くの川まで走った。夕暮れに景色がよく映えていた。私が今住む土地には、高い建物がない。そのおかげで地平線が遠くのほうまでみえる。

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 ふたつある川の合流部まで行ってみようと思った。途中からアスファルト舗装されていない道から砂利に変わり、チャリを適当なところで置いて歩き始めた。10分もすればたどり着くと思っていたら、目測を誤っていて30分近くかかった。気づけばチャリで走っていたころの清涼感はなく、頭虫がぶんぶんと頭上を飛び交い、ときおり耳元を通り過ぎて私を苛立たせた。私はイヤホンの音量を上げたが、一度抱いた不快感は消えなかった。 

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 私は、気づけば銀杏BOYZみたいなことばっかり書いていたし話していたし、それを自分が好きな人にわかってもらいたかったのだと思う。しかしもう自意識と自慰で息をつまらせている場合ではない。自分にまとまりつく頭虫についても書かなければならない。頭虫の不快な羽音も、肌を舐めるような湿気も、サンダルに入りこんで裸の足を汚す砂も、ぜんぶ詳らかに書かなければならない。

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 この前登山をしてエゾナキウサギをみた。たぶんエゾナキウサギはおれのことを知らないと思う。でも人の形をした何かくらいに思ってもらえれば御の字。